建築の構造設計者はエンジニアの中でも法的制約を強く受ける方だと思います。
法の意図を踏まえつつ、技術的にも問題ないという最適解を出す必要があります。
法を守ることばかりを考えていると、本当に実現したいものから離れていってしまったり、逆に技術的なことばかりを考えていると申請が通らないといったことになってしまうため、両方の趣旨に沿ってバランスよく設計をしていくことが求められます。
このバランス感をどのように考えて設計していくのが良いのかを書いていきたいと思います。
今回のポイントは3つになります。
①各種基準の階層を把握する
②やみくもに適用させようとしていないか!?
③法も技術も統合することが設計者の役目
①各種基準の階層を把握する
構造計算をする上でも、色々な基準があります。
基準といっても、建築基準法、施行令、告示といった法的拘束性があるものから、建築学会関連の基準といった基本的には守る必要がありますが法的拘束性のないものといった形で幅があります。
法についてもただし書きに適用させれば、他の解釈が適用できるといったものもあります。こういった色々な階層があるものの大きな体系を頭でイメージしているかどうかで、課題の捉え方の深さが大きく変わってきます。
よくやりがちなこととしては、都合の良いところや理解できたところのつまみ食い状態になっていて解釈に抜けが合ったり、思い込みで都合の良い方に解釈することです。
法や基準は一見、複雑に見えますが、ルールがしっかりしている分、そのルールを最初に理解すれば強い武器になります。根拠が明確になるので自信を持った発言や判断ができるようになってきます。
②やみくもに適用させようとしていないか!?
この体系を理解しないとどの内容にもやみくもに適合させようとしてしまうということがあります。特に構造計算プログラムを使っているときにその問題は起こります。
参考:構造計算プログラムに使われない付き合い方
当然ではありますが、すべての法や基準を完全にマスターした上で、構造計算プログラムを使い始めるわけではないので、使用者が理解できていない基準に対しても満足しているのかを検討してくれます。
適合していないときには①に示したような階層に丁寧に分類をしてくれるわけではないので、結果として“適合していないということ”だけをワーニングメッセージとして伝えてくれます。
なので、計算を満足させることばかりに夢中になってしまい、法や基準での位置づけを把握しようとしないと、適合させる必要のないことに対して部材を変更して満足させたりするなど実現したい建築から遠ざかるような変更をすることが起こってしまいます。
③法も技術も統合することが設計者の役目
法と技術的な見解が完全に相反するわけではありませんが、どちらも完全ではないので、一品生産の建築設計をしていく中では多少折り合いが上手くいかないことがありますが、それを解決することが、構造設計者の腕の見せ所でもあります。
あまり言い方がよくないかもしれませんが、構造設計者として本当に安全性のあるものを提供できるのであれば、法的に完全に黒でないのであれば、白と判断できる根拠を作ることに妥協をしてはいけません。
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