【構造設計】自然・工学・形を繋ぐ通訳者

【構造設計】

構造設計は建築設計の分野の中でも特に専門性が高いと言われます。
構造計算をするにあたって、普段見ないような言葉やたくさんの計算式を使ったり、大量の計算書を作ったりしているところを見ると専門性が高く見えるのかもしれません。

しかし、良い建築を作るためには各分野の人間が協力することが不可欠です。

そんな場面で専門性の高いと言われる構造設計者としてどのように立ち振る舞うことが求めらるのか書いていきたいと思います。

今回のポイントは3つになります。
①豊富な言語力を身に着けよう!
②思考が進む具体性を示そう
③譲れない部分は伝える

①豊富な言語力を身に着けよう!
構造設計と言うと、計算などの理系に特化しているのに言語力?と思うかもしれませんが、専門性が高いからこそ、豊富な言語力・表現力がないと考えていることや課題意識を共有することができません。

専門性が高いからと言って、仕事の中でやり取りをする人がみんな構造設計に明るい人ばかりとは限りません。それは設計チームや施工者のように建築を知っている人から、素人のお客さんといった幅があります。

分かり合うことなく業務を進められことはありません。自分の知っている言葉をぺらぺらと話しているようであれば信頼できる設計者にはなれません。
専門性が高い内容を誰でもわかるような言葉で伝えられるということは、工学の本質的な理解と言語力の両方があって実現できることです。

工学部分については実務をやっていれば確実に触れますが、言語力については普段から今やっていることをどう伝えるかということを考えていないととっさに言葉が出ません。
同じ言葉を何回も言ったところで伝わらないし、長々と話したところで伝わりません。端的な説明を心がけましょう。専門家は長く話しがちです。必ず相手の反応を見ましょう。
足りないのは相手の理解力ではなく自身の言語力です。

実はブログで記事を書いている目的のうちの1つとして言語力を身に着けるといった意図もあります。

②思考が進む具体性を示そう
構造躯体は建築の形に直結するので、初期の形状を生み出す段階から、意匠設計者とは密に調整をしていきます。

そのような時も端的でわかりやすい言葉を使うことは当然のこととして、ここでは伝わるだけではなく、具体的な検討が進む言葉を使っていくことが求められます。

例えばよくあるやり取りとして、意匠設計者からの要望に対して、スパンを飛ばすと柱梁が大きくなる、こういった改善をすれば部材は小さくできるといったことがあります。
こういったやり取りの中では、積極的に具体的な寸法を示して話すことが重要です。人それぞれイメージする寸法は異なるので、イメージを共通化していくことが重要になってきます。

もっと部材を小さくしてほしいと言われたといって頭を悩ましているスタッフが、具体的な寸法目標がないままや、完全にシステムを変えないと不可能な寸法を目指して検討していることがあります。

実はきちんと寸法を伝えていれば、元々想定してた断面サイズでも十分に小さいと思ってもらえることもあるし、大変更になるとは思わず要望していたなんてこともあります。
総体的な傾向だけでは、その案を採用するのかは決断できません。10mm小さくなっても半分になっても小さくなるに含まれてしまいます。

総体的な概念はすぐに出てきても具体的な寸法が出てくるようになるには、普段からそういった場面を想定して計算と向き合っている必要があります。

構造計算プログラムに任せてばかりではなく、応力や変形(剛性)、部材耐力といった数値を日々眺めていく中で身についていく感覚です。電卓との仲の良さを見ると、構造計算の理解度が見えてきます。

③譲れない部分は伝える
与件を十分に引き出したら最後はどのように実現するかになっていきます。技術翻訳していくことが最後の見せ場になります。最初は無理だと思ったことでも、頭ごなしに否定はせずに、あらゆる切り口で検討してきましょう。事例調査は大きな実現可能性を探る上では重要です。

こういった機会を繰り返していくことで、技術の幅は広がっていきます。

徹底的に実現性を検討して要望に応えることはとても重要なことではありますが、構造設計者として絶対に譲れない部分は必ず伝えるようにしましょう。
そういったことをしっかりと伝えてくれる設計者の方が信頼されます。

無理なことは無理だときちんと言いましょう。人命より優先することはありません。
正直言って構造計算プログラムに慣れてくれば、構造計算プログラム上ではOKとする結果を作ってしまうことはできてしまいます。

最終的には構造設計者としては、安全率と建築空間とのバランスを判断することになります。

参考:構造設計は幅を持って安全性をデザインしていく

譲れない部分というのは、構造的に重要な部分なので意外とそれがコンセプトになってきて全体的な考え方がスッキリしてくるなんてこともあるので遠慮せずに積極的に伝えていきましょう。

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