【構造設計】幅を持って安全性をデザインしていく

【構造設計】

構造設計は自然という未知の世界を対象としており、建築基準法や基準をそのまま当てはめて満足させたからといって、本当に耐震性があるとは限りません。

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そういってしまうとどうやって判断していけば良いのかという壁にぶつかってしまうことがあります。

今回はどのように未知の世界の中でより精度の高い答えにしていくのかの考え方について書いていきたいと思います。

今回のポイントは3つになります。
①完璧な正解を求めない
②両極端を把握する
③塩梅を把握する

①完璧な正解を求めない
あらゆる部分で仮説を多分に含んでいる世界なので、完璧を求めても成果にたどり着けない思考に陥ります。また完璧な正解があるという思考になると、一定の答えが出た段階で思考が固定化されてしまう可能性もあります。

完璧な正解がないと思うからこそ、常に何か抜けている視点がないか?もっとよくできる視点があるのではないか?ということを考えて改良を重ねることでより良いアイディアが生まれてきます。

②両極端を把握する
幅があると言っても無限に幅があるわけではありません。まずは略算などで両極端の条件での数値を算出します。そうすると実際の事象はその間の数値で表現されることになります。

例えば、最も基本的な支点のモデルでピンと固定がありますが、実際の固定度はその間にあるということです。建物全体の耐震性についても強度型と靭性型の間にあると言えます。

参考:耐震性は耐力と硬さ(剛性)のバランスで考える

一番安全側の設計としてはピンと固定の場合の両方で検討しておくことになりますが、それでは端部も中央も応力が大きくなるし、中央の変形も大きくなるので、断面を大きくするなどの対応が必要になって非常に経済的でないし、空間への影響が出てきます。

なので、構造設計の中ではこの両極端の上界と下界の間をどうすれば狭くできるかを考えます。ピッタリの答えを算出しているというよりも幅を設計しているとも言えます。
ピンポイントの解を求めようと式をしっかり覚えているタイプだと、ある事象の極端な上界と下界を問うたときに出てこないことがあります。これだと原理や事象の理解が弱いと言えます。

検討の中で使用する条件において確度が高い場合にはこの幅を狭くできます。例えば寸法や固定荷重については確度高く条件設定できるし、1スパンの小梁のように要素が少ない場合も不確定要素が少ないので、幅を狭くして精度高く経済的に設定できるといった感覚です。

③塩梅を把握する
漠然とした表現に聞こえると思いますが、日本人らしいこういった感覚は建築設計の中ではとても重要だと思っています。

構造設計に限らず、例えばデザインや空気環境や光環境というのも、人それぞれで感性や体感は異なるものなので、絶対的な正解がない中でそれらを統合した1つの建築を作っていくことが設計になります。そんなときには色々な要素を踏まえて塩梅のよいところを落としどころにします。

そういったよい塩梅を把握するためには、そもそも構造計算の中で使う式や検討方法や趣旨の塩梅をしておかないと判断ができません。
例えば構造計算に出てくる式がどういった条件で導かれたもの(実験式?理論式?)なのか、式での解は下限値なのか平均値なのかを把握しておくと判断がしやすくなります。

検討方法自体が安全率の高めのものになっているものであれば、必要耐力に対して耐力がギリギリでも問題ないと判断するし、大事な部分であったり、想定外なことが起こるかもしれなければ安全率は高めに設定します。

どのようなことに対しても一律で1割の余力を持たせるといった考えではなく、内容に応じて塩梅を調整するようにしましょう。

参考:余力をどのように設定する?過剰思考になっていない?

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