【構造設計】申請業務の進め方と心得

【構造設計】

設計を行う中で申請業務は外せない業務の1つです。法を満たしていることを確認してもらうことで実際に建築工事を行うことができます。

今回はそんな申請業務の具体的な進め方や協議の心得などを書いていきたいと思います。

①協議の心得

申請業務は確認申請機関や計画通知であれば自治体の建築指導課などと協議をすることになります。はじめのうちは協議で指摘されるとそれを絶対視して、設計内容を変更して満足させようとしてしまうことがあります。

協議で指摘されたことは絶対とは限りません。建築は状況によって様々な解釈があります。
なので、そのまま真に受ける前に、相手が基準法の何条に書いてあることについて話しをしているのかをしっかりとおさえる必要があります。可能性であれば書面やメールにしてもらって、まずは認識を揃えることが大切です。

相手の方が法について知っているからと言ってすべてを鵜呑みにせずに、必ず認識を揃えた上で法についての議論をするようにしましょう。お互いに曖昧な経験論などで議論するのは絶対にNGです。

協議相手を絶対視してしまわないようにするためには事前準備がとても重要です。設計者からすれば、申請機関にお伺いを立てるような協議をするのは負け戦にいくようなものです。
あくまでも、確認に行くのが協議です。あらゆる指摘を想定した上で、ロジックや根拠資料を準備して、『うん』と言ってもらうことが目的です。

一度お伺いを立ててしまったり、意図せぬ結論を出されてしまうとそこから転換することは非常に難しくなります。なので、どんなことでも一発目が重要ですが、協議では特に重要になります。

②本受付と仮受付の違い

確認審査を正式に受付をする前に仮受付け(通称:仮受)をするのが一般的です。
仮受付の場合の提出は正副の2部提出は不要で1部提出すればよい場合が多いです。最近は電子申請も多いので、その場合には特に部数は関係ありませんが、構造計算書のように枚数が多いものを提出するとなると、部数がちょっと減るだけでもだいぶ楽になります。

また仮受の場合には指摘に対しての修正を行う場合でも、変更前の資料を残しておく必要はないので、差し替え作業が楽になります。本受付の場合には正式書類となるので正副の2部提出した上で、根拠資料として差し替えた図面も✖印をつけて残しておく必要があります。

追加して提出する資料は追加説明書という扱いになるので、審査機関によって頭紙の付け方など書式があるのでそれに合わせた体裁とします。本受付後も修正や仮受け段階の指摘対応もできますが書類の扱い上の手間が増えるという違いがあります。

構造設計者の場合には同様の手続きを構造計算適合性判定(通称:適判)においても行う必要があります。制度の改定により、確認審査と適判は同時審査できるようになっているので同時に仮受をして、それぞれから指摘をもらって合わせて修正するということができます。
適判の済証と副本は確認申請を下ろすために必要な書類となるので、手続きが完了後に確認審査機関に提出します。(確認審査の書類と適判の副本が同じである必要がある)

民間確認審査機関の場合には適判との並行審査が多い印象ですが、計画通知の場合には適判に仮受して指摘の修正をしたものを自治体に提出することが多いです。
しかし、これについては明確にルールがあるわけではないので、相手の状況やこちらの急ぎ具合に応じて最適な方法を選びましょう。

また、本受けになると審査期間の上限が基準法で決まっています(確認:35日、適判:14日)。ただし、適合しない旨の通知書(指摘)を設計者に提示して審査を中断すればその間の期限はカウントされなくなります。仮受であればこういった正式書面でのやり取りを効率化できる面ではよいですが、時間圧力がなくなってしまうので長期化しそうな場合には早めに本受けしてしまうのも方法の1つです。

ちょっとしたトラブルにならないための補足ですが、『適合しない旨の通知書』は正式な書面として発行されるため、郵送でも送られてきます。代理人や申請者の書き方によって客先に届くことがあります。あまり申請業務になれていないお客さんが見ると『適合しない旨の通知書』という名前にはインパクトがあります。驚かせないためにも事前に書類の意味を伝えておきましょう。

③実務上での留意点

以降は実務上のちょっとした小ネタになります。
仮受けの場合はこちらが急いでいても、本受付の審査が優先されます。民間審査機関ではそれで審査が遅れることはほとんどないですが、計画通知の場合にはこまめに確認しながら進めることをおススメします。

・適判を早めにおろしてしまうと、構造の書類以外の意匠図や面積に変更があった場合に修正できなくなってしまうため、申請指摘及び消防の審査が完了した段階で本受付⇒済証の発行をしてもらう必要があります。

・早めに適判の本受けをすると修正が発生した場合や、14日以上過ぎてしまった場合には指摘を出してもらう必要が出てきてしまうため、確認済証の発行の直前に本受付をします。

・あまり推奨はしないですが、構造の指摘対応が完了していなくても消防では構造の審査はないので、お願いして先に消防審査に書類を回してもらえる場合もあります。

・申請提出時のデータなど節目での元データは必ず残しておきましょう。一つのデータを継続して更新しないというのが鉄則。

・副本は現場で変更(計画変更・軽微変更)が発生した場合に、変更前資料として正式書類として使用するのでスキャンデータでの保管は必須。

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